家族機能研究所紀要 第5号

収録内容
斎藤  学
 児童虐待に関する加害者治療モデル  −精神医学の現場から−
 男性のセクシュアリティと攻撃性
 児童期の虐待によるPTSDの治療
 父親を再定義する
太田 真弓
 
妊娠が母親へ与える心理的影響
  −前児が先天性心疾患であった母からのアンケート−
中村 俊規
 構造主義・ポスト構造主義診断学と治療論
  −人格の複素成分と、TFT療法による強度に沿った観察と介入−
四戸 智昭
 我が国の断酒会活動とアルコール医療政策に関する若干の考察
 看護政策における意志決定
  −アメリカ看護協会社会政策声明から−
資料
 診療所の臨床サンプルからみた、児童期性的虐待の発生傾向
研究会記録
 IFF研究会<ルポルタージュ「東電OL殺人事件」>
  佐野 眞一
 IFF研究会<育児文化の創出と人類の攻撃性>
  正高 信男
序 斎藤 学 家族機能研究所代表
 この2001年には、これまで毎年9月に行ってきた開設○周年という行事を取りやめにした。次は10周年祭くらいにしようと考えているが、この紀要の発刊は毎年続ける。記念行事はなかったが、今年の9月に6周年目を無事に迎えたことに変わりはない。臨床場面でも研究の方でもずいぶんスタッフが入れ替わって、相変わらずなのは私の他数名程度のものである。それでも『アディクションと家族』(季刊)という定期刊行物は発行し続けているし、これに加えて1999年秋からは『子どもの虐待とネグレクト』(年2回)という雑誌の編集も行うようになった。この2つの雑誌の発行に費やされるエネルギーは相当なもので、ようやく校了したと思うと、すぐ次の原稿の催促、チェックに追われることになる。いずれの雑誌もレフェリー制をとった学術誌であるので、投稿原稿のチェックには大いに気を遣う。特に小児科や社会福祉などの領域の論文は、専門家たちのお力添えがないとどうしようもない。毎日の診察の合間にこんなことをしているとたちまち日が暮れるので、退屈しないし病気にもなれないところが身のためかも知れない。
 研究としては6年間の臨床の中で蓄積してきたものを何とか論理化しようと試みている。今年は昨年に引き続いて児童虐待被害者の認知機能と脳図像の探索を行った。これは一昨年に引き続いて、獨協医大の中村俊規講師との共同作業である。一方で、重度の近親姦虐待の被害者が、その記憶をどのように維持したり取り戻したりするものかを調べてみた。こちらの方はジュディス・ハーマンらが20年も前に手がけたものだが、彼女たちへの方法論上の批判も踏まえて日本の症例を検討する必要はあるだろう。ついでに我がクリニックが、これら気の毒な女性たちへの対応にどの程度成功したかも評価してみたのだが、意外な好成績にびっくりしている。この6年間、臨床面で貢献してくださった方々に改めて感謝したい。
 さいとうクリニックはかねてから「子どもを虐待してしまう」ことを悩む親たちと、その“虐待" の対象になってしまっている子どもたちを治療対象としてきたのだが、今秋から小児科学のトレイニングを積まれてきた太田真弓医師が重要な役割を担うようになって、子どもたちへの対策が大幅に革まった。日々の臨床に追われる中ではあるが、この側面においても斬新な臨床研究が出せるようになるであろうと信じている。

2001年12月2日


Institute for Family Functioning